里山の住処
築70年の古家に、200坪の裏山がついた土地を購入したフライフィッシングをこよなく愛する家具職人の家。新宿から電車で40分、バスに乗り換え10分ほど行くと、東京とは思えない里山が広がる。周囲にはこれといった施設もなく、買い物や通学も楽ではないが、無条件に広がる野山や小川を毎日眺めることができるという幸せは何にも代えがたいものだろう。しかも、この地が東京の中心まで1時間足らずであることを考えると、ここを見つけた友人の感性と嗅覚に敬服するばかり。既存の古家は40坪程の民家であった。家具だけではなく、生活の質全てにこだわりを持つ友人とは、設計者とクライアントという関係ではなく、共に考え作る、良きパートナーという関係となった。改築の中で最も大きな形状変更は切妻屋根を改造し、北側の屋根部分を高窓に変えたこと。薄暗かった部屋に柔らかな間接光を取り込み、天井にこもった熱を外に流し、室内に心地よい風を生むこととなった。居間の南側には、深い庇が陽射しを遮ってくれるソファコーナーがあり、寝そべると、高窓越しに裏山の竹林がそよぐ姿と、以前の家では隠されていた丸太で出来た簡素な小屋組みを眺めることができる。こだわりを持ったものづくりと自然を愛する住人が移住したことで、この古家に新たな命が吹き込まれ、次世代に受け継がれる住処と昇華していくことを願う。
Design: 眞田大輔 / 福田善成
Land: 東京・町田
Client: 個人
Construction: 有限会社松井建築
竣工年月日: 2015年9月
用途: 専用住宅
構造・構法: 木造
階数: 地上2階
建築面積: 87.93(29.67坪)
延床面積: 105.76(32.04坪)